――ネーブルオレンジの香りに包まれて、僕はジュースを絞った。2個でコップ一杯のジュースがとれ、その場でごくごくと飲んだ。僕はすっかり気分がよくなっていた。それは、喉の渇きがいやされたからではなく、この2カ月間にわたり自分を覆っていた暗雲の切れ間を見たからであった。目をそむけてきた冷蔵庫のなかのネーブルは皮に守られ、立派に生きていた。そのおかげで、僕は食べ物を無駄にすることなく、そして、僕の全生活のなかでほんのわずかではあるが、冷蔵庫のオレンジが入っていたスペースだけはきちんと片づけることができたのである。
僕は、身動きのとれない状況を動かすことのきっかけが、自分が本来何をなすべきかという、大上段に構えた正論ではなく、1個のネーブルオレンジだったという現実に素直に感動した。もしや、未来のみえない閉塞状態にある日本も、小さな問題をきちんと解決することが、この流れを変えるきっかけになるかもしれない。そう思うと、自分のような小さな力も自分の届く範囲できちんとやるべきことをやれば、果実を立派に守ったオレンジの干からびた皮になれるのかもしれないのだ。
『毎月新聞』 佐藤雅彦
案外、ささいな、ちょっとしたことで
流れが変わったりするものですね。
問題が大きく見える時でも、
ひとつひとつ片づけていくと
目の前が開けてくるのに気付くこともある。
小さな動きでも、それが、
大きく変化するきっかけになったり…。
言いかえれば、
日常の小さなこともおろそかにしないってのも、
大切なことなのでしょうね。
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