繰り返しますが、男にとって「自立」なんていうのはどうでもいいことです。重要なのは、ただ「一人前になること」――これだけです。そしてこのことは、別に男だけのことではありません。「自立」を当然の前提にした女だって、やっぱり同じです。 (中略 ) 「自立して一人前になる。いろんなことができるようになる」――重要なのはこれだけです。
「一人前になる」というのは、人間関係も含めて、「自分でいろんなことができるようになる」です。「自立」というのは、「なれあいになってしまった関係からの脱出」です。「一人前になる」は一人でもできるし、自分で“できない”を認めて一人でコツコツと努力することです。(中略)
つまりどういうことかと言うと、「“一人前になる”よりも、“自立”の方がむずかしい」です。だから私は、前の章で言ったんです――「“自立”なんかしなくたって、“一人前になる”を達成してしまったら、“自立”は自動的に可能になる」と。
そういわれてみれば
今や“自立”というキーワードはあちこちで目につくが
一昔前によく言われた“一人前になる”という言葉の
本当の意味をつかんでいる人は少ないように感じる。
(いわゆる仕事に限らず)自分で
いろんなことができるようになるということ。
要は、それで、自分に自信がついてくるという。
親も含めて、「人の思惑」なんてどうでもいいんです。いろんなことをさっさとできるようになった方がいい。そうすれば自分に自信がついて、「人の思惑は人の思惑で、どうでもいい」と思えるようになります。そういう状態を、「他人の思惑から自由になった」と言って、そういう状態をこそ「自立している」と言うのです。「自立」というはやり言葉に乗せられる前に、「一人前になる」という古くからの言葉の意味をかみしめた方がいいですね。
「自立、自立」で、他人との関係をいっさい断ってしまって、「自立」が「孤立」になってしまったらつまらない。そういう間違いをおかさないようにすることです。 『これも男の生きる道』 橋本治
古い本にはなりますが、かえって
今はバランスの時代だから、この橋本治氏の言っていることは
(たぶん、若い年代の人に向けてなんだろうけど)
ある意味、老若男女問わずに、必要な感覚でもあり、
皆が、あらためて認識し直した方がいいような気がします。
著者(橋本治氏)の新書などもいろいろ出ていて、お薦めです。
新しいものを、私も、読んでみようと思っています。
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